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上司に見せたい真の顧客ニーズの捉え方

 

上司に見せたい真の顧客ニーズの捉え方

 

21世紀に入って以降、顧客のニーズは大きな変化を遂げました。1990年代までは「不足を補うこと」「効率をアップすること」「隣人よりも良い暮らしをすること」「より良いもの・快適なものを得ること」といったシンプルな欲求が、日本社会全体を占めていました。

 

しかし、モノがあふれている今、「ほしいモノがない」という人も少なくなく、モノが余る時代に突入。これまでのシンプルなニーズに応えるのみの製品・サービスを供給するだけでは、顧客は満足しなくなってきました。そうした時代の変化に対応しきれず、日本では製品にこれといった差のないコモディティ化が進んでいます。さらに企業間では価格競争が激化。価格という魅力でしか顧客を惹きつけられない事態に陥っています。ただ当然、価格競争だけでは成長は頭打ち。利益率も低下してしまいます。

 

では、どうするか。

 

変化し続ける真の顧客ニーズを捉えることで、まだ企業も顧客も気付いていない市場を掘り起こすことが利益をあげる道といえます。

 

たとえば、インターネット時代に「コミュニティを構築したい」「多くの共感を得たい」というニーズを見つけて、世界的なSNSサービス『Facebook』を生みだしたマーク・ザッカーバーグは、まさに新しい市場を作り出した経営者の1人でしょう。

 

そこで今回は、変化の激しい時代に即した真のニーズを捉える方法をご紹介していきたいと思います。経営者の方はもちろん、情報が氾濫する時代のビジネスシーンで生き残っていきたいという方に、ぜひご覧いただきたい内容となっています。

 

目次 [非表示]
1.ニーズの正しい理解
1-1.ニーズとウォンツ
1-2.ニーズがウォンツに変わるメカニズム
1-3.シーズ
2.真のニーズを捉えるための方法
2-1.定量調査よりも定性調査を
2-2.顧客を観察して、消費者心理をつかむ
2-3.インターネットを活用する
3.これからの時代に必要なマーケティング
3-1.マーケティング3.0とその事例
3-2.マーケティング4.0とは?
4.おすすめの本
コトラーのマーケティング・コンセプト|フィリップ・コトラー著
「思わず買ってしまう」心のスイッチを見つけるためのインサイト実践トレーニング|桶谷功著
心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす|ジェラルド・ザルトマン著
顧客の本音がわかる9つの質問|橋本哲児著
5. まとめ

 

 

 

 

1.ニーズの正しい理解

 

真のニーズを捉える方法をご紹介する前に、ニーズとは一体何なのかをひも解いていきましょう。 基本的な定義はもちろん、なぜニーズを捉えることが大切なのかも併せてご理解いただけるようにまとめました。

 

1-1.ニーズとウォンツ

 

まずマーケティングの第一人者と言われているコトラーは、ニーズとウォンツを次のように定義しました。 ニーズは「人間が感じる欠乏状態のこと」で、ウォンツは「その欠乏を補うための具体的な解決策(製品・サービス)」としています。

 

ニーズとウォンツを説明する上で、よく使われるのが「ドリル」のたとえ。ドリルメーカーは「顧客はドリルがほしいというニーズを持っている」という誤解をしがちですが、顧客が本当に求めているのは「穴」。穴を開けられる道具なら、別にドリルでなくても構いません。むしろドリルよりも簡単で安全に穴を開けられる道具があれば、そちらを選ぶでしょう。

 

つまりこのたとえ話で言うと、「穴を開けたい」という“必要性”がニーズであり、「ドリルがほしい」という“欲求”がウォンツということになります。

 

もうひとつ例を挙げれば、「喉が渇いたから何か飲みたい」というのがニーズで、「仕事終わりにビールが飲みたい」というのはウォンツです。後者の場合、水やお茶といった別の飲み物でもなく、焼酎やウイスキーといった別のアルコールでもなく、ビールでなければその欲求は満たせません。

 

そのため、企業が目指すべき姿は、自社製品に対してウォンツが生まれる状況。「他のスマホではなく、iPhoneがほしい」「東京ディズニーリゾートに旅行したい」というように競合他社ではなく自社の製品・サービスを欲してもらえる工夫が必要です。

 

しかし、現在のようにモノや情報が溢れている時代においては、ウォンツが顕在化した時点で製品・サービスをリリースしても、時すでに遅し。顧客から選ばれることは難しいでしょう。

 

だからこそ、顧客と競合が気付いていない真のニーズをいち早く発見し、そのニーズを満たすウォンツを“他社に先駆けて”かつ“他社にマネできない方法で”形にすることが求められています。

 

1-2.ニーズがウォンツに変わるメカニズム

 

ウォンツはニーズありきです。必要性や不足を感じていなければ、何かをほしいとは思いません。そして、ウォンツはその対象物を顧客が認知していなければ生まれません。

 

たとえば、冒頭でご紹介したドリルの例でいえば、「穴を開けたい」というニーズが発生したとしても、「ドリルという穴を開ける道具がある」ということを顧客が知らなければ「ドリルがほしい」というウォンツも発生しません。

 

つまり、ニーズをウォンツに変える第一歩は、「知ってもらう」ということに他なりません。 そのため、ウォンツを発生させる手立てとして、最も有効なのは「メディア」といえます。たとえば、グルメ番組で紹介されたレストランを見て「今度ここに行ってみたいな」と思ったことはありますか? それがまさしくウォンツの生まれた瞬間です。

 

その裏にあるニーズは「美味しいモノを食べたい」かもしれませんし「彼女をオシャレなレストランに連れて行きたい」かもしれません。 最初にテレビを例に挙げましたが、インターネットでも店頭でもウォンツを生み出すことは当然可能です。

 

「好きな芸能人のブログで紹介されていた商品が欲しくなった」「店頭で試食をしておいしかった」など、購買行動につなげるウォンツを生む仕掛けはテレビでもネットでもリアルでも作ることができます。もちろん営業自身がメディアとなる「営業活動」でもウォンツを生むことはできるでしょう。

 

最近特に注目されている「O2O(Online to Offline)」というマーケティング手法も、ウォンツを生み出す仕掛けのひとつです。O2Oとは、オンラインでの活動を実店舗での購買活動に結び付けるための施策のこと。

 

たとえば「ネットで価格を調べて実店舗で購入する」「オンラインクーポンを配布しているお店に出向く」などが具体例です。SNSとスマホの急速な普及により、誰でもいつでも情報を仕入れられるようになった今、ニーズをウォンツに変える手法はたくさんあります。 このように、「知る」ことで潜在的に顧客にあったニーズはウォンツに変わっていきます。

 

1-3.シーズ

 

シーズとは、その名前のとおり、ビジネスの種のことを指します。もともと企業が持っている技術やノウハウ・アイデアなどのことです。 顧客視点で商品開発を行なうのが「ニーズ志向」と言われるのに対し、生産者側が自社の持つ独自の技術などを活かして商品開発を行なうことを「シーズ志向」と言います。

 

モノがあふれている現代の市場においては、ニーズ志向がマーケティングの中心となっていますが、得てして新しい市場を創出してイノベーションを起こしてきたのはシーズ志向で生み出された製品でしょう。

 

たとえば、富士フイルムが独自のフイルム技術を活かして化粧品市場に参入しましたが、これはシーズ志向の典型といえるでしょう。 ただし、いくらシーズ志向とはいえ、顧客ニーズを満たしていなければ、売れません。シーズありきではありますが、ニーズ志向以上に顧客ニーズをマーケティングして開発を行なう必要があるでしょう。

 

2.真のニーズを捉えるための方法

 

では、具体的な方法についてご紹介していきましょう。 ここでは、いわゆる表面的なニーズではなく、顧客・消費者自身も自覚していない“真の”ニーズを捉える方法にこだわって紹介していきたいと思います。

 

2-1.定量調査よりも定性調査を

 

アップル創始者であるスティーブ・ジョブズは、ニーズに関してこんな言葉を遺しています。 「消費者に、何が欲しいかを聞いて、それを与えるだけではいけない。

 

製品をデザインするのはとても難しい。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのかわからないものだ」と。 そう、つまりは顧客や消費者自身も「何が欲しいのか」をよくわかっていない、ということ。 だからこそ、消費者ニーズをつかむ方法として一般的な「アンケート」などの定量調査では、特定カテゴリーの人数や割合、傾向を知るには有効でしょうが、“真の”ニーズをつかむことはできません。

 

なぜなら、アンケートは一問一答形式であるため、自由回答形式であっても、回答に対する深堀りができず、まさに表面的なニーズしか出てこないからです。 たとえば、「今、焼酎を飲む習慣のないアルコール好きの人に焼酎を飲んでもらえるような商品を開発する」という課題で考えてみましょう。

 

普段アルコールは飲むけど焼酎は飲まないという人たちに向けて「焼酎を飲まない理由」を聞くアンケートをとったとします。おそらく回答は「飲みにくい」「クセがある」「匂いが苦手」といった内容になるでしょう。

 

では、全く匂いのない焼酎や飲みやすい焼酎を作ったところで、焼酎を飲まなかった人が焼酎を買うでしょうか? 100%ではないですが、やはり購入までいたらない可能性のほうが高いと思います。 それは、焼酎を飲まない本当の理由に気付いていないから。 前置きが長くなりましたが、では一体、真のニーズをつかむにはどんな調査が有効なのでしょう? それは定性調査です。

 

たとえば、定性調査の代表的なものにインタビューがあります。インタビューであれば、被験者がその回答に至った理由や経緯、同じような理由で敬遠している商品はあるかといった質問もでき、数値化できない価値観・心理構造も知ることができます。 先ほどと同じように焼酎を例にしてみましょう。

 

焼酎を飲まない理由をインタビューしながら深堀りしていくと、どういう結果が出るでしょうか。ワインやビールなどを日ごろ飲んでいる人たちから見た焼酎は、「おじさんっぽい」「ダサイ」といったイメージだったとします。この結果、焼酎を飲まない一番の背景には「おじさんっぽく見られたくない」「ダサイと思われたくない」という深層心理が隠れていたことがわかりました。

 

つまり、人はお酒の種類を選ぶにも、スタイリッシュさを求める生き物だということ。 ということは、オシャレなボトルに入れた焼酎やスパークリング焼酎のような新商品を出すと売上は伸びるかもしれません。

 

真のニーズを探るには、データとにらめっこしているだけではNG。人の深層心理に迫る調査が必要と言えるでしょう。

 

2-2.顧客を観察して、消費者心理をつかむ

 

顧客のニーズをつかむには、定量調査よりも定性調査が有効だと前項目でもお伝えしました。 こちらでご紹介するニーズをつかむ方法は、究極の定性調査といってもいい「エスノグラフィー」という調査方法です。

 

エスノグラフィーとは、もともと文化人類学や社会学などで使われる手法のひとつで、対象となる部族や民族の文化における特徴や日常的な行動様式をフィールドワークにより理解しようというもの。

 

実際に調査対象となる人々と暮らしや仕事の現場を共にしながら、生活行動や作業を観察していくという方法です。 近年では、ビジネスシーンでも消費者理解に役立てるべく、多くの企業が採用しています。 というのもこの調査法を応用すれば、アンケートやインタビューのような方法では把握できない、調査対象の人々自身も無意識で行なっている行動に関するデータが入手できるから。

 

「これがしたい」「これがほしい」と調査対象者が何か欲する以前に、どういう状況でどのように行動したらどんな欲求が生じるのかが理解できます。人間の意識の95%は潜在化しているという調査もありますから、エスノグラフィーはその潜在化した無意識の行動にアプローチする有効な手法で、消費者の本音やこだわりにより深く迫ることができるとされています。

 

プロダクト開発にいち早くエスノグラフィーを取り入れたのは、Xerox PARC。1979年、Xerox PARCに入社した文化人類学者が、新しいコピー機開発のために、ユーザーがコピー機をどう使っているかを撮影して調査しました。その結果、多くの人が「コピーすること」そのものに苦戦しているということがわかりました。

 

そこで、コピーを開始できるボタンがすぐに見分けられるように「緑色のスタートボタン」を採用。今日では当たり前のプロダクトデザインですが、もともとはエスノグラフィーから生まれたものでした。

 

そこから一気にエスノグラフィーが取り入れられるようになり、今では多くの欧米企業がエスノグラフィーを取り入れています。たとえば、P&Gは2000年から個別ユーザーの調査予算を5倍にしたと言われているほどです。

 

またマイクロソフトには、家庭や職場のユーザーを観察する要員(エスノグラファー)が約300人いるといわれ、Windows Vistaの開発では米国・日本・インドなど複数の国の世帯を観察。マイクロソフト側のテストでは見つからなかった問題点が800件ほど発覚したそうです。その他、インテルや携帯電話シェアトップのノキアなど、名だたる世界的な有名企業がエスノグラフィーを活用して、商品開発を行なっています。

 

日本ではまだ採用している企業は少ないのですが、最近ではエスノグラフィー調査を手がける調査会社や広告代理店も増加。商品開発に向け、大規模な調査を行ないたいということであれば、まずはプロに相談することをオススメします。 大規模でなければ、あなたの扱っている製品・サービスの売場にいらっしゃる消費者を観察するところから始めましょう。

 

たとえば、ある飲料メーカーの商品開発担当者は、1年かけて多数の消費者を終日尾行して行動をつぶさに観察し記録したそうです。そうすることで消費者の行動パターンや嗜好が把握でき、商品開発に非常に役立ったとのこと。時間も手間もかかりますが、エスノグラフィーであれば数字などのデータからはわからない、真の顧客ニーズが見えてくるはずです。

 

2-3.インターネットを活用する

 

FacebookやTwitterをはじめとしたSNSはもはや単なる情報発信ツールではありません。日本中はもちろん、世界各国の人のニーズを拾える、情報収集ツールです。なぜなら、SNSはリアルの場では口に出せないような本音がポロッと出てしまう場だから。特に匿名性もあるTwitterは、少し口が悪いと言ってもいいほどの本音が飛び交っています。

 

そこで、ここでは、ネット上でニーズを拾う方法を3つ紹介したいと思います。この方法を応用すれば、別のサイトやメディアでもニーズが拾えるはずですので、ぜひ試してみてください。 Twitter活用法 自社の製品・サービスがある程度、知られているなら、Twitterで製品名・サービス名を検索してみましょう。

 

消費者の率直な意見を知ることができるはずです。Twitterでネタにされるほど知られていないという場合は、関連ワードを検索してみてください。いろいろなワードと組み合わせて検索するのがニーズを探るコツ。たとえば缶コーヒーのニーズを知りたいなら「缶コーヒー 嫌い」「コーヒー 高い」「コーヒー 味」「コーヒー ランキング」など様々なワードと共に検索することで、多様な角度から消費者の声を収集できるでしょう。

 

また企業のアカウントを持っているのであれば、消費者とのコミュニケーションツールとしてもちろん活用できます。前項目で挙げた定性調査に協力してくれる方の募集なども、幅広い年齢層向けに行なえるはずです。 Facebook活用法 まず企業もしくは製品・サービスに関するアカウントを作ることが前提の活用法です。

 

そこで製品・サービスに関する情報を公表できるということもそうなのですが、Facebookで一番ニーズを探るために活用できるのは「インサイトページ」。自分が管理するFacebookページの解析ができる機能のことで、いいね!の数はもちろん、ユーザー属性や投稿ごとの反応などを無料で見ることができます。 インサイトの見方ですが、Facebookページの上部にある「インサイトをチェック」をクリックしてみましょう。

 

そこからまず「人」をクリックしてみてください。そうするとそのFacebookを見ている人の性別・年齢・場所・使用言語を知ることができます。 また「投稿」をクリックしてみると、あなたのページを見ている人がオンラインになっている時間帯を知ることができます。

 

そしてニーズを捉えるのに最も役立つのが、投稿ごとのアクション率を知れるページ。アクション率の高かった投稿、そして低かった投稿の共通点を洗い出すことで顧客ニーズが見えてくるはずです。 検索ワード活用法 検索ワードには、顧客ニーズが詰まっています。なぜなら、検索は人が困った時にするものだから。

 

あなたが関わっている製品・サービスの関連ワードが、どんな検索ワードと一緒に検索されているのかを調べてみましょう。 また、もし企業のHPやブログがあるのであれば、それらがどんなワードをもとに検索されているのか管理ページから見られるはずです。そこに顧客ニーズが詰まっているでしょう。

 

3.これからの時代に必要なマーケティング

 

ソーシャルメディアの登場で、一気に変革期を迎えたマーケティング業界。

 

コーズマーケティング、バズマーケティング、アジャイルマーケティングなど近年さまざまなマーケティング手法が取り上げられ、正直一つひとつを試すヒマもないという方も多いのではないでしょうか。 そこで本章では、これからの時代に必要なマーケティングの根本・土台ともいえる考え方をご紹介したいと思います。

 

3-1.マーケティング3.0とその事例

 

近代マーケティングの父といわれる経営学者のコトラーが提唱している「マーケティング3.0」。ソーシャルメディア普及など近年の生活環境、さらには消費者の価値観の変化を背景に提唱された、マーケティングの新しい考え方のことです。

 

マーケティング3.0について詳しく説明する前に、従来のマーケティングを表現している「マーケティング1.0」と「マーケティング2.0」について説明していきたいと思います。 まず「マーケティング1.0」としているのは、戦前・戦後の時代の考え方です。製品を販売することが目的で、製品中心のマーケティングが行なわれていました。

 

これも当然で、産業革命以降、どんどん技術革新が進む中、消費者が求めていたのは機能的価値。だからこそ、企業はより機能的価値のあるものをできるだけ安く大量に作って売れば、利益が上がりました。 次に「マーケティング2.0」は、1990年代の不況による消費冷え込みの時代の考え方です。需要過多に陥っており、これまでの製品を中心としたマーケティングではモノが売れなくなってきました。

 

さらに情報技術の進化により、消費者は自ら充分な知識と情報を得て、類似の製品を簡単に比較できるように。結果、「みんなが同じものを持つ」のではなく、一人ひとりが自分の好みに合わせて製品やサービスを選択する時代になりました。

 

そこでマーケティングコンセプトは、「製品を売ること」から「消費者は何を望んでいるのか」にシフトします。いわゆる「顧客志向」のマーケティングで、市場をセグメント化した上で特定のターゲットに向けて他社より優れた製品を提供することがその役割でした。

 

しかし、スマホやSNSの登場といった劇的な生活の変化によって、長年マーケティング業界を牽引してきたマーケット2.0という「顧客志向」だけの考え方では通用しなくなってきています。 一番の要因は前述したとおり、スマホやSNSの登場です。製品・サービスやそれを提供する企業の情報がネットにあふれ、良い情報もネガティブな情報も簡単に手に入るようになりました。

 

今やネット上の情報を確認することなく、日用品以外の買い物をする人のほうが少ないのではないでしょうか。インターネットが購買行動に大きく影響するようになりました。 次に市場の成熟も大きな要因のひとつ。製品のコモディティ化が進み、たとえば冷蔵庫ひとつとっても、店頭には同じような性能・デザインの冷蔵庫が多数並んでいます。

 

もはやスペックや表面上のデザインだけでは他社と差別化できない時代です。 最後に社会的課題の顕在化が挙げられます。国内外の貧困問題、地球温暖化、少子高齢化の進展など、あらゆる問題が顕在化したことで、「社会や世界のため、あるいは他者のために何かできないか」と考える人が増えています。

 

そうした時代背景をもとにコトラーが提唱したのが「マーケティング3.0」。これまでの製品や顧客といった視点に留まることなく「どんな社会を作りたいか」「世界をより良い場所にする」という価値主導のマーケティングコンセプトのこと。

 

具体的には、単に自分のニーズを満たす製品・サービスではなく、その裏側にあるストーリーや特定の製品に対する共感の追求が重要になってくるとコトラーは説いています。 マーケティング3.0では、これまで重視されてきた企業や製品のポジショニングに加え、企業のミッション・ビジョン・価値といった精神的な価値・想いが主軸となります。

 

たとえば、iPhoneはまさにマーケティング3.0の成功例でしょう。今やスマホ市場において、iPhoneは圧勝といえる立ち位置ですが、高い技術力を誇る国内企業がなぜAppleに勝てなかったのでしょうか。

 

それは国内企業が「消費者の声を聞き、消費者が望んでいるものを提供する」という従来の考え方でマーケティングをしたのに対して、Appleは「我々がどんな生活をしたいか」という発想で製品開発を行なったからでしょう。スティーブ・ジョブズがiPhone発表の場で口にした「我々が望んでいるのは、どんな携帯電話より賢く、超簡単に使えるもの。それがiPhone」という言葉は、マーケティング3.0の考え方そのもの。

 

消費者が望むものではなく、どんな暮らしができたらスタイリッシュでステキかを考えて作られたのがiPhoneです。 またマザーハウスという企業も、マーケティング3.0の考え方で成功している会社のひとつです。バッグや小物を販売している会社なのですが、彼らがミッションとして掲げているのは「途上国から世界に通用するブランドを作る」というもの。

 

バングラデシュやネパールと言った貧困国を拠点に、現地で収穫できる素材を活かしてオシャレかつ高品質な製品をつくっています。この製品が国内外で売れているのは、まさに消費者が製品の裏にあるストーリーを買っている結果でしょう。

 

マーケティング3.0について考える上で注意したいのは、この考え方は決して過去のマーケティングを否定するものではないということ。これまで重要視されてきた顧客志向はもちろん、データ分析などによる論理的思考などが土台にあった上で、感情的思考によるマーケティングが効果を発揮します。

 

「いかに売るか」という視点から、事業を通じて「どうやって社会をより良い場所にするか」という視点を持つというとわかりやすいかもしれません。 これまでお伝えしてきた「真のニーズをつかむ」ことに加えて、マーケティング3.0の考え方を用いることで、これからの時代でも効果的なマーケティングが可能になるはずです。

 

3-2.マーケティング4.0とは?

 

「マーケティング3.0」が少しずつ浸透してきた矢先、コトラーは「マーケティング4.0」という考え方を提唱しました。よりその先の未来を見据えたマーケティングコンセプトです。 目まぐるしい変化を遂げる今の時代、「マーケティング3.0」を実践しつつ、さらに先を見据えた「マーケティング4.0」についても意識することで、先駆けた発想をすることができるはず。

 

こちらではそうした次代を生きるマーケッターに向けて、マーケティング4.0についてもご紹介したいと思います。 これは自己実現を目指すマーケティングのこと。

 

会社のトップも、社員も、すべての経済活動をする人々が自己実現を目指すことによって、より良い社会ができるとコトラーは語ります。 具体的にいえば、社員一人ひとりが何をしたいかを考え、それを全体に共有し、それをベースに会社がビジョンを作り上げていく。

 

そのビジョンを実現できれば、より良い製品・サービスが生まれ、みんなの暮らしが良くなっていくとコトラーは言っています。 まだまだ新しい概念なので、事例は少ないのですが、イギリスの医療費削減対策がマーケティング4.0を理解するのに役立つと思うので紹介したいと思います。

 

医療費が増大していたイギリスは、その抑制を国家課題としていました。その解決策として予防医療を推奨していたのですが、国民にはなかなか浸透しません。

 

さらに意識の高い医師が患者さんにちゃんと予防医療について説明・啓蒙したとしても、それは給与に反映されるわけでもありません。「患者さんを健康にしたい」という医師の想いが果たされず、自己実現のジレンマが起きます。

 

そこで国は、患者の健康を維持した医師にポイントがつく制度を開始。改善した患者さんの人数が増えるほどポイントと収入が上がる仕組みで、中には全収入の15%がポイントによるものとなった医師もいるほど。

 

まさに医師の信念が具現化され、自己実現を手助けしている好例といえます。 国家の制度なので、ビジネスではないのですが、このマーケティング4.0の考え方から学べるところは多くあるのではないでしょうか。

 

4.おすすめの本

 

コトラーのマーケティング・コンセプト|フィリップ・コトラー著

 

記事内にも度々登場している「近代マーケティングの父」と呼ばれたコトラーがマーケティングで最も重要と考える80のコンセプトを選びだし、コンパクトに解説した1冊。

 

マーケティングの初心者向けで、208ページと読みやすいのが特徴です。マーケティング用語を実践の場に落とし込み、ビジネスシーンですぐに役立つヒントをちりばめている点は、多くのビジネスパーソンの心を掴むはずです。ただし、本格的にマーケティングを学びたいという方は、コトラーの代表的著書『マーケティング・マネジメント』のほうを先に読むことをオススメします。

 

「思わず買ってしまう」心のスイッチを見つけるためのインサイト実践トレーニング|桶谷功著

 

消費者の潜在意識にあるニーズをどう明らかにしていくかを実践的に説明した1冊。よくある「こういう考え方でやりましょう」というようなトレーニングではなく、具体的な質問内容やワークショップ、ブレストの中身まで提示されています。

 

本を読みながら、一緒に消費者になりきって潜在意識をひも解いていくことで、隠された真のニーズを発見できるかもしれません。

 

心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす|ジェラルド・ザルトマン著

 

人の感情や思考は95%が無意識であるという前提で、心や脳の働きを捉えたマーケティングのあり方を提唱している1冊です。認知心理学や脳神経科学などの最新研究の結果を用いた調査を応用し、深層レベルで心や脳を捉えていきます。

 

実践的ではないですが、定量調査など従来の方法に疑問を感じている方が読むと非常に興味深い1冊になっているはずです。

 

顧客の本音がわかる9つの質問|橋本哲児著

 

すべての売上は顧客の本音が左右すると説く、売上100億円超を生みだしたコンサルタントが明かす法則をまとめた1冊。真の顧客ニーズをつかむためのシンプルな方法がわかります。さらに高い調査費用や難しいシステム導入なんて必要ないことがわかります。

 

多くのマーケティング担当者がこの本を読んで「こんなにノウハウを明かしていいのか」と驚いたと語るそうです。マーケティング担当者には必読の1冊といえます。

 

5. まとめ

 

「マーケティングとは経営そのもので、消費者に自社を愛してもらうことが最終的なゴールだ」とはコトラーの言葉です。 真の顧客ニーズを探る方法や、次世代のマーケティングについてなど、いろいろご紹介してきましたが、本質はこのコトラーの言葉に集約されているように感じます。 目的は消費者に自社を愛してもらうこと。

 

自社を愛してくれるファンを増やせれば、企業は永続的に存在できる。その最終的なゴールをぶらさないことが、最も大切な「マーケティングを上手くいかせるためのコツ」なのかもしれません。

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