セルフブランディング
セルフブランディング
当ページを訪れてくださった方は、多かれ少なかれ「セルフブランディング」に興味がある、あるいは深く知りたいとお考えのことと思います。
セルフブランディング――10数年前はほとんど見聞きすることのなかったこの言葉が人々の関心の的になったのは、ひとえにFacebookやTwitterの台頭、そしてスマートフォンの急激な普及によるところが大きいでしょう。
それまで、ネット上に顔写真や実名をアップし日々の活動を発信するのは、芸能人や一部の個人事業主など限られた人達だけでした。
ところがSNSを利用することで誰もが気軽に自分のしたこと・考えたことを投稿できるようになり、かくして「一人ひとりが自分のメディアを持つ」時代が到来しました。
と同時に「SNSで自己拡散すること」がそのままイコール「セルフブランディング」だとする捉え方が広まってしまったのも事実です。
まず断っておきたいのですが、上記はセルフブランディングのごく一部のみを切り取った表現に過ぎません。本来、セルフブランディングとは、もっと大きな可能性を秘めた、生き方までにも深い影響を与えうる素晴らしいメソッドです。
そこでこの記事では、セルフブランディングの原点に立ち帰り、その方法論と、セルフブランディングがもたらす未来について解説していきます。
読んでいただいた多くの人が、より自由で幸福に生きることのできる術を発見してもらえたら、とても嬉しく思います。
1. 効果的にセルフブランディングする方法
まずセルフブランディングの注意点ですが、多くの人は「自分をこう見せたい」という思いばかりが先行し
私はこんな仕事をしてきました
私はこんなことが出来ます
私はこういう人間です
など、「私は」で始まる売り込みに力を注ぎがちなのはよくあることです。
例えば、カポエラを広げたい人が注意したいこと
ブラジルの伝統的なスポーツ・カポエイラを極めた日本人選手が、自分がこれまでに磨いてきた競技テクニックを基に一冊の技術解説本を出版したい、と思っていたとしましょう。
アピールする能力も経歴もあるし、やりたいこともある。ですがここには一番大切な視点「なぜ、その本をみんながわざわざ読まなくてはいけないのか?」が欠けています。
日本では決してメジャーとは言えない、競技人口も少ないであろうカポエイラの技術解説本が、果たして彼のセルフブランディングにとって本当に最適な手段なのか。
この分析なくして、効果的なセルフブランディングはありえません(物珍しさから、確かに話題性は期待できそうですが…それはいったん置いておきます)。
では、いかにして分析すべきか。この章では、セルフブランディングとは?
という概要から、セルフブランディングを成功させるための方法論、そしてセルフブランディングで得られるメリットについて一つずつ解説していきます。
セルフブランディングとは
セルフブランディングとは、まったく無名の個人が会社や組織の肩書きに頼らずに「自分のブランド」を構築し、ビジネスの成果に結びつけることです。
企業であればブランド=信用であり、それがしっかりしていれば、顧客からの問合せやメディアからの取材も増え、こちらから売り込まなくても仕事が舞い込んでくるというビジネスモデルに転換します。
売上や利益を上げる中で株式公開が実現できれば、さらに経営資金を集めやすい好循環に移れます。
これは、個人の場合もまったく同じロジックが応用できます。
つまり自分を商品として客観的に捉え、
この商品のターゲットとなる市場はどこか?
市場が求めているものは何か?
を徹底的に考えるのです。
セルフブランディングを成功させるための3つのポイント
それでは、自分を商品と捉えた時のマーケット分析方法を解説していきましょう。大きく、以下の3つが挙げられます。
1|「自分の強み」が何なのか、明確に把握する
突然ですが、初対面の相手に、名刺を渡したり会社名を言ったりせずに自己紹介をしてみてください。
果たしてスムーズにできるでしょうか。こうした場面からも、私たちが普段いかに会社のブランドに頼って生きているかを思い知らされます。
「○○商会で××をしています」
という肩書きを取り除いたあなた自身に残るもの。それこそが「パーソナルな強み」なのですが、特に若いうちはなかなかこの強みが見つからず苦悩することもあるでしょう。
そんな方のために、自分の実績や強みを鍛えていく方法を伝授します。ぜひ実践してみてください。
「将来なりたい自分」を想像し、それが実現した際のプロフィールに書かれているべきこと(=将来みんなに思われていたいイメージ)をリストアップしておく。
「得意なこと」「好きなこと」を洗い出して、自分がどこに向かおうとしているのかを確認する。
何か一つでも「人に教えられること」を持つようにする
2|「自分の強み」が世の中の誰の役に立つのかを考えること
強みを洗い出すことができたら、続いて、その強み(商品)がターゲットとなる市場はどこか?を考えていきましょう。
それはすなわち誰の役に立つのか?を考えることと同じです。
先のカポエイラ選手の例で言うと、彼の強みは技術解説本を出せるほど競技に精通していることではなく、学生時代にブラジルへバックパッカー旅に渡り、そのような辺境の地で伝統スポーツの有名選手になるまでに至った「へこたれない精神力」や「コミュニケーション術」なのかもしれません。
そちらの強みを題材にした書籍の方が、多くの人に勇気を与える効果が期待できそうではないでしょうか。
このように、強み(商品)が勝てる土俵を見極めることが、セルフブランディングの成否を分ける第2のポイントとなります。
3|点在する経験や能力をつないで、「得意領域」という一本の線にする
漫然と言われたことをこなしてきたり、転職を重ねては多種多様な仕事に就いてきたり、経験や能力が断片的に散らばっていて強みが見出しにくい人も中にはいると思います。
そういう人は、それぞれの断片から共通項を抽出し、点のように散らばった経験や能力を「だいたいこういう分野」と大きなくくりでひとまとめにする作業をおすすめします。
たとえば、A社では事務方としてデータの整理作業、B社ではコールセンターでスーパーバイザーを務めていたとします。
一見、関連性のなさそうなキャリアですが、じっくり振り返ってみると、A社でもB社でも、会社から求められていたのは
「データ化された無秩序な“数値”や“顧客の声”から法則性を見出し、業務フローに落とし込む」
というスキルだったことに気づけるかもしれません。
そしてそれが、たまたまではなく現在のあらゆる場面でも発揮できる「再現性のあるスキル」なのであれば、もはや立派な得意領域であると言えるでしょう。
このように、断片的な経験や能力をストーリー立てて体系化することも、セルフブランディングでは重要な要素です。
セルフブランディングの成功があなたにもたらす未来
リーマンショック以降、かつてブランドを築いた会社も、大企業と呼ばれる会社も、絶対に潰れないと言われたメガバンクも、明日はどうなるかわからないという空気が蔓延しています。
相次ぐ増税や年金不安から、老後に心配を抱える若者も増えています。
もはや会社に属しているから安心、という会社依存の時代は終わりました。
「少ない労力で多くの成果をあげる」
レバレッジマネジメントの第一人者である本田 直之氏曰く「個人サバイバルの時代」が始まっているとのこと。
そうなると、かつては会社がやってくれていたブランディングも、個人が自分でやる必要性が出てきます。
来るべき時に備えてセルフブランディングの方法論を確立しておくこと、それは個人サバイバルの時代において、たとえ会社や組織に属していなくともビジネス的に成果を出せるというリスクヘッジおよびメリットに他なりません。
長期的にブランドを持続させていく
せっかく構築した自分ブランドも、一過性で終わってしまっては意味がありません。
企業も、長きにわたって経営を続けることを最重要課題にしています。
それと同様、セルフブランディングも長期継続を目指していかねばなりません。
ブランドとは信用です。信用は、構築するのは非常に長くかかりますが、失うのは一瞬です。
そのことを肝に銘じひたすら、まっすぐ、愚直にやること、それが長期ブランディングにおいては最も重要なことです。
2.セルフブランディングが成功している著名人
ここでは「セルフブランディングがうまくいっている人」と「その人達に共通して当てはまるポイント」を紹介します。
まず先に共通点ですが、以下のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
自分の進みたい方向がわかっている。
現在時と自分の進みたい方向との間にある差分(ギャップ)を埋める努力をしている。
自分ならではの独自性を常に意識している。
周囲への貢献性を常に考えている。
そして次に、これらを体現している著名人をピックアップいたしました。
勝間和代さん
もはや有名になり過ぎて、今や実際、本人の思惑とは裏腹な見方をされてしまう「有名税」に苦慮しているかもしれませんが…セルフブランディングの草分けとしてはやはりどうしても外せないので挙げておきます。
勝間氏のスゴいところは、本業の方での顧客獲得のために「有名になる」ことを目標に掲げ、メディア露出の手段を厭わなかったところです。
炎上も批判も予見した上で、マスの話題になることに狙いを定め、自分という商品を売り出していったことにただただ驚きです。
安藤美冬さん
「ノマドワーカー」という言葉を流行らせ、「職業名はフリーランスです」と公言する安藤美冬さん。
2012年にはTBS系列『情熱大陸』にも出演しました。
安藤さんが一躍有名になったきっかけは、フリージャーナリストの佐々木俊尚氏にTwitterでフォローされたこと。
当時16万5000人近くものフォロワーを擁していた佐々木氏の影響力の大きさは言うまでもなく、わずか1日で安藤さんのフォロワー数も一気に700人増えたそうです。
“〜前略〜これは、自分のメディアが成長するまたとないチャンスだと直感したのです。
そこで、佐々木さんのアンテナに引っかかりそうなブログのタイトルや書き方を入念に研究して戦略を立て、ターゲットを佐々木さん一人に絞り込んでブログを書き続けました。”
引用:『アドタイ』(2012年11月01日 掲載 広報会議 編集部)より
これはまさに第一章で述べた、セルフブランディングの成功術2の「ターゲットを絞り込む」が奏功した事例だと言えるでしょう。
芸能人におけるセルフブランディングの成功者
芸能人は言うまでもなく自分自身が商品ですから、皆、ブランドマネジメントを徹底しています。
その中でも近年目覚ましい飛躍を遂げているのが、女優の杏さん。世界的な名優・渡辺謙さんの娘でありますが、「親の七光り」をものともせず精力的に数々のドラマや映画に主演。
いずれもヒット作に導いているという成果が、何よりの実力の証でしょう。
今や「渡辺謙の…」という前置きとともに紹介されることはまずなくなりました。
俳優の細川茂樹さんも、セルフブランディングを成功させ活躍している一人です。
その長身のルックスと甘いマスクを活かしてモデル、俳優としての地位を確立し、近年では新領域であるバラエティー番組にも出演。
家電をはじめ投資や金融など、いくつもの分野でマニアックな知識を披露するマルチぶりを発揮しています。
俳優、金融、家電、それぞれの分野でプロと呼べる人はたくさんいるかもしれませんが、“掛け合わせた”のは細川さんただ一人だけ。
これにより、彼はオンリーワンのポジションに到達したと言えます。
3. 失敗するセルフブランディング
ここまでは、成功例を中心にセルフブランディングについて学んできました。
ここからはその逆、失敗するセルフブランディングの例をご紹介していきます。反面教師から学べることは多いはずです。
「失敗のもと」その1‐自分を良く見せようとするブランディング
当然のことですが、経験やスキルが伴っていないのに見せ方ばかりを意識する、張子の虎ではブランディングとは言えません。
美しくインパクトのあるCMを打っても実際の商品は粗悪品だったとしたら、無意味どころかむしろ逆効果、信用は地に墜ちます。
また、商品にオリジナリティ(独自性)が皆無で、「その人である必要性」が見えないような場合も、ブランディングが上手くいくことはありません。
「失敗のもと」その2‐プロモーション不足
かといって、アピールしなさ過ぎも考えものです。
これは「いい商品を作れば、みんなファンになってくれるはず」
「綿密なマーケティング調査を経てニーズのある商品を開発したのだから、放っておいても売れるはず」
といった職人的発想の持ち主に多いのですが、せっかく優れた実績やスキルを持っていながら、PRをせず世の中に知られないままであれば意味がありません。
セルフブランディングのロジックのもと、オリジナリティのある強みを見つけたら、いかにそれをターゲットへ届けるかというプロモーションまでを考え実行してください。その一連の流れを含めて、セルフブランディングと呼ぶのですから。
「失敗のもと」その3‐自己中心
「有名になること」そのものが手段ではなく目的になってしまっている人。
「私が」を主語にしたアピールは得意だが、肝心な「世の中の何の役に立てるか」が入っていない、あるいは入っていたとしてもそれを求めているターゲットがこの世に存在しないと言っていいほどニッチ過ぎる、などとにかくイタい。
つまりはセルフブランディングのロジックを無視している人たちです。
セルフブランディングの本質とは、
「自分の強みを明確に理解し、それをプロモーションする過程でありのままの自分を成長させていくこと」
にあります。そのことを胸に留め、より幸せな方向へと人生を導いていきたいものです。
4. おすすめの本
パーソナル・マーケティング 〜どんな時代でも“選ばれ続ける人”になる39の法則|著作・本田 直之
少ない労力で多くの成果をあげる「レバレッジマネジメント」の提唱者であり、数々の企業を上場に導いたり個人の出版プロデュースを手掛けている著者による、セルフブランディングの定番書。
「個人の時代」を生き延びていく上で重要なセルフブランディングの方法論が、実にわかりやすい文章でまとめられています。
全39個、それぞれの「法則」の説明の後で付箋メモのように要点を絞った「演習」が記載されており、これを毎日2〜3個ずつ反復演習するだけでも、充分なセルフブランディングのトレーニングになるでしょう。
自分の「軸」を作る セルフ・ブランディング|著作・有吉秀樹
多種多様な職業・職歴の9人による、困難を乗り越えチャンスを活かした体験談。企業が社員に何を求めているのかを理解する手掛かりとなりそうです。
自分ブランドの教科書|著作・藤巻 幸夫
昨年惜しまれつつ亡くなった、“元カリスマバイヤー”をはじめさまざまな顔を持っていた藤巻氏によるセルフブランディングの実用書。
伊勢丹、バーニーズ・ジャパン、福助、イトーヨーカ堂…数々のブランドに携わってきた藤巻氏のイズムを垣間見れる良書。
「自分ブランドとは?」を考えるきっかけ作りの入門書としても最適。
5.まとめ
いかがでしたでしょうか。もしかしたら、これまで漠然と持っていたイメージよりも、セルフブランディングはもっとロジカルで体系的な方法論であることに気づいていただけたら、まずはそれだけでも本望です。
セルフブランディングとは、決してカッコいいものではなく泥臭い努力の末に得られる成果。
まとめると
●「自分の強み」を明確にする
●「自分の強み」が世の中の誰の役に立つのかを考える
●ターゲットに認知されるよう、プロモーションをする
●ブランディングが継続できるマネジメント手法を構築する
この4プロセスが回れば、あなたもセルフブランディングの成功者です。
そのためにも、日々のトレーニングが大切。見せかけではなく、実の部分――「会社」や「職業」といった肩書きを除いた時に残る自らのスキル――を伸ばし、成長させていくという本質を追い求めていきましょう。
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