セールストーク術
セールストーク術
トップセールスと呼ばれる彼らは、商品や場所が変わろうとも、“必ず思うように売れる”と言われています。それは、生まれ持った才能やセンスではなく、単純にテクニックが優れているからにすぎません。つまり優れたセールストークテクニックを身につければ、誰もがトップセールスマンになることができるというわけです。
本記事ではトップセールスが使いこなしているテクニックを、コミュニケーション術を中心に展開していきます。
1.ラポール(信頼関係)を築くための3つの方法
セールスマンとお客様とのコミュニケーションが深まるほどに、「あなたから買いたい」と思ってもらえる度合いが高くなります。
コミュニケーションの前提となるのが、相手との信頼関係です。ある程度お互いが信頼し合っていなければ、良好なコミュニケーションは生まれません。
相手と信頼関係を築くことを「ラポール」を築くといいます。元々は心理学の用語で、セラピストと患者が互いに信頼し合い、安心して感情の交流を行うことができる状態であるという心的融和状態を表していましたが、現在では対人全般に拡張した意味でよく用いられます。
ラポールとはフランス語で「橋を架ける」という意味です。心と心の間に信頼という名の橋がかかった状態でこそ、コミュニケーションの行き来が生まれるわけです。
ラポールは基本的に相手に対する好意や敬意から築かれます。
少しでも早くラポールを築くことが、営業活動での大きな課題。そのために有効なのが「ペーシング」です。ペーシングとは、相手とペースを合わせることです。
そのために必要な具体的な3つの補方法をお伝えしましょう。
1-1.ミラーリング
これは相手の仕草や動作を真似することです。鏡のように目の前の相手と同じ動作をします。相手がコップを持って水を飲んだら、自分もコップを持って水を飲む、髪の毛を触ったら、自分も髪の毛を触るなどしてください。ただし、あくまでも、「さりげなく」行うことがポイントです。相手が気付かない程度に行います。
相手が自分と同じ行動をとることで、無意識の内に仲間、信頼という意識を相手に抱かせ、好感度を高めることができます。
1-2.チューニング
雰囲気や感情、思考方法、ムードなどを合わせるものです。例えば、相手が悲しそうにしていれば自分も悲しそうに、逆に相手が楽しく明るい時はその気持ちに合わせ、感情レベルを同じくらいにします。
感情は潜在意識の領域のものなので、自分でコントロールしようと思っても、その瞬間に湧き上がる感情は止めることはできません。もちろん、認知(解釈)を変え、無理に抑え込むことはできますが、本来の感情は潜在意識にあります。その感情に同調させることで、相手は自分のことを「敵」ではなく「味方」だと思うようになります。
1-3.マッチング
話し方を相手に合わせます。ゆっくり話す人には同じくらいゆっくり話す、早口の人には早口で話します。また、方言、声の大小、高低、口調を真似るのも効果的です。
大人が小さな子に「赤ちゃん言葉」で話しかけるのが、マッチングの典型的事例です。人は自分と似ている人、自分にふさわしい外見や地位の人と一緒にいたいと潜在意識では願っていて、性格や好みなどが似た人が集まる傾向があります。似ている相手には魅力を感じ、安心感を覚えます。あなたの親友や恋人、家族を思い出してください。性格、外見、仕草、言葉遣いなど何かしら似た部分があることに気づくでしょう。この原理を利用して、意図的に類似させていくのが、マッチングです。
「ミラーリング」「チューニング」「マッチング」を意図的に行うことで、ラポールを築くまでのスピートが格段に上がり、セールストークをより有利に進められるようになります。
2. お客様へ買う理由を伝える3つの意味
お客様は、「買う理由・メリット」を十分に自覚していない場合があります。
その場合、
「購入すると、どのようなメリットがあるか」
「購入しなかったら、どのようなデメリットがあるか」
「何を、どのように選んだら、正しい選択ができるか」
「これから、どうやって考えたらいいのか」
を伝え、お客様の購買意欲を育てていくことが大切です。
売れている営業マンは、必ず「お客様が購入する理由」を上手に伝えています。その3つのポイントを紹介していきましょう。
2-1.購買意欲が高まる
購入の際、決定にあたって「何を、どの順番で、どのように考えればいいか」「どのような判断基準を持てばいいのか」がわかってくると、購入までに道筋が見えるため、お客様の購買意欲が高まります。それにともなって、気付きを与えてくれた相手に対する信頼度もアップします。
2-2.「選ばない」「購入しない」ことのリスクが明確になる
お客様は「自分で決定したい」という欲求を持っていますから、第三者からの押しつけを嫌う傾向があります。
ですが、一方で失敗はしたくないため、決定の参考となる「情報」を集めています。お客様は、「失敗するくらいなら、買わないほうがいい」と考えがち。しかし、情報を集めることによって「購入しないこともリスクとなり得る」と気付くようになります。そして、「購入するリスク」と「購入しないリスク」を天秤にかけることで、客観的に考え始めます。
2-3.営業マンと「継続接点」を持ちたいと考えるようになる
営業マンとの関係性が弱く、かつニーズが低い状態で売り込まれると「強引にクロージングされるのではないか」という不安を抱くようになります。
ですが「あの営業マンに会うと、有益な情報がもらえる」と思ってもらえるようになれば、継続的な接点を持つことができるでしょう。
3.セールストークの基本とは
経済や消費が成熟した現代では、「その会社でしか買えない商品」を持つことは稀でしょう。どの企業も、類似品や代替商品が存在します。
仮にニーズがあったとしても、「当社の商品はすごいので、買ってください」という売り込みに対して、「はい、わかりました」とすぐに購入するお客様は限りなくゼロに近いでしょう。
人は、他人から売りつけられたり、価値観を押し付けられたりすることを嫌います。人間には、自分の行動を「自分で決めたい」という欲求があるからです。
選択肢を奪われたり、他人に強制されたりすると、たとえそれが自分にとってプラスの提案であったとしても、その行為や主張に反発を感じることがあります。こうした心理の状態を「心理的リアクタンス(抵抗)」といいます。
3-1 商品説明をしてはならない理由
営業マン自身には、「売り込んでいる意識」はないのかもしれませんが、商品を出発点にしたセールストークは、お客様からは「売り込み」ととられます。
「この商品はすばらしくて」と営業マンが商品説明したとたん、購買抵抗(心理的リアクタンス)が起きてしまいます。
購買抵抗を薄めるためには、「商品」ではなく「メリット」を出発点に説明すべきです。
「今日はメリットのある話をお持ちしました」
「これを実現するために、当社ではこのような技術を開発しました」
「その技術が搭載されているのがこの商品です」
このように@メリット→A技術的な裏付け→B商品説明の流れであれば、自然とお客様の商品・サービスへの興味を高めることができます。多くの営業マンが、この流れとは逆の順番で話をしてしまいがちです。
営業マンにとって商品を売るのは「目的」ですが、お客様にとって商品購入は「手段」にすぎません。極論をいえば、商品説明は不要です。
4.買おうかどうか悩んでいるお客様に効く4つの情報
買おうかどうか迷っているお客様に道筋を教えるには、次の4つのセールストークが効果的です。漠然とした不安が解消され、お客様は具体的な検討を始めるようになります。
4-1.購入と非購入、それぞれのメリットデメリットを伝える
「買った時にはこういうメリット、デメリット(リスク)がありますね」
「買わなかった時にはこういうメリット、デメリット(リスク)がありますね」
このように、購入した場合、購入しなかった場合の価値について、あえて客観的な比較を提示します。
4-2.検討する際に考慮すべきポイントを伝える
「この案件でしたら、この3つのポイントは外さないほうがよろしいかと思います」
このように、お客様の価値観に合ったポイントを具体的に提示すると、お客様は圧倒的に判断がしやすくなります。
4-3.検討する際の時間軸を伝える
「マンションを購入するなら、このくらいの時期に契約をすませておくと、○か月後には入居できますね」
「この車種は人気なので、納車まで3か月待ちです。仮に、夏休みに間に合わせることをお考えでしたら、遅くとも5月までに決められた方がいいかもしれません」
「○月に税制が変わりますから、それまでに導入するのも選択の一つかもしれません」
仮のゴールを決め、そこから逆算して、「いつスタートすればいのか」という検討の時間軸を提示します。
4-4.プロとして「目からウロコが落ちる」アドバイスをする
1〜3までは、インターネットや雑誌からも拾える情報です。有益であることは変わりませんが、月並みな情報しか提示できないと、お客様から「この営業マンでなくても、別にいい」と思われてしまうかもしれません。そこで、次のようなトークを加えましょう。
「実は、あまり知られていないのですが……」
「私自身も最近になって気付いたことなのですが……」
「普通の営業マンは言わないことなのですが……」
「あえて言わせていただきますと……」
このように「プロならではの視点を提示すると、お客様の考え方を変える助力となります。
「迷っているお客様のためのセールストーク」を事前に準備しておけば、たとえ今は案件がなくとも、着実にお客様を育てることができるはずです。種をまいて、育てて、刈り取るという、「農耕民族的な営業スタイル」を実践できるでしょう。
新規顧客を力任せに獲得する「狩猟民族的」な営業スタイルは、大きな曲がり角にきています。多少時間はかかっても、悩んでいるお客様の先のようなセールストークで育てることをしなくては、これからの時代、お客様を増やすことはできません。
5.お客様の「見解・感情・間違い」を見極めることの重要性
営業マンは、自分の価値観や好み、志向性をお客様に押し付けてはいけません。大事なのは、営業マンがお客様の価値観に合わせることです。
営業マンにとっては些細なことが、お客様にとっては大事なことになる可能性もあります。商品のメリットが、お客様にとってはデメリットになることもあるでしょう。
そのため、お客様が「買うか、買わないか」を検討している段階で、お客様が大事にしているものを見極めることが必要です。営業マン側の話を一方的に聞かせるのではなく、「お客様の話を聞かせていただく」のが前提です。
5-1.お客様の見解を見極める
たとえば「今、市場はこのような状況になっています」と情報提供をした後に、「○○さんはどう思われますか?」「御社ならいかがですか?」という言葉を加えてみましょう。お客様は「自分のことに置き換えて理解」するようになります。
お客様に「自分も当事者である」「関係がある」と思ってもらうことが大切です。
5-2.お客様の感情を見極める
1との違いは、「感情」に立脚している点です。人間は複雑な生き物のため、理論的に正しいからといって、感情的に納得できるとは限りません。「商品がいいのはわかるけど、みんなが持っているから嫌だ」とか「設備導入の必要性はわかるけど、大変そう」など、相手の気持ちを知っておくことが大切です。
5-3.相手の間違った考え方を見極める
「マンションは広さにこだわって選んだ方がいい」「デジカメは画素数が大きいほうが綺麗な写真が撮れる」など、お客様の既成概念や既成知識が間違っていることがあります。
会話のキャッチボールをして相手の間違いに気付いたら、「それも大事ですが、こちらも大事です」「それはそもそも、こういうことかもしれません」と軌道修正をしましょう。
「商品・サービスへの興味を高める」ステップは、「価値観を合わせていく作業」でもあります。お客様に新しい気付きを与えることができれば、双方の価値観を合わせることが可能です。
6.「わかりやすく伝える」ために必ず押さえる4つのこと
売れる営業マンのセールストークに求められるのは、「わかりやすく伝える」ことに限ります。お客様が理解し、納得できる伝え方を身につける必要があります。
6-1.客観性を保つ
営業マンが自社商品のメリットを強調するあまり、客観性や公平性に欠けてしまうことがあります。お客様が求めているのは、「決定するための判断材料」であって、営業マンの主観ではありません。
「こっちのほうがいいですよ」などといった偏った押しつけは、お客様の反感を招く可能性もあります。
営業マンは、記者になったつもりで、「自分ならこの商品をどのように取材し、どのように伝えるだろうか」と俯瞰して考えてみるのも役に立ちます。
お客様にとって、営業マンは「客観的な情報源」。例を挙げていきます。
<主観的な例>
「この商品は絶対おすすめです! 本当に使いやすいです!」
「品質は当社製品が一番です」
<客観的な例>
「89%のお客様が、従来品よりも使いやすいと回答している商品です」
「耐久テストで、他社製品の2.5倍の耐久力を実証しました。こちらが比較データです」
6-2.情報は羅列せずに、体系的に伝える
「体系的」とは、「箇条書きで伝える」ということです。情報をいくつかのポイントにまとめて話した方が、理解の手助けになります。
箇条書きで言いたいことを書き出しておけば、話し手も「自分は何を話したいか」が明確になり、聞き手にとっても要点を整理しやすくなります。
「これから○○についてお話します。選ぶ時に外してはいけないポイントは3つあります」
このように、「話すテーマ」と「ポイントの数」を提示しておけば、お客様はどこに集中して話を聞けばいいのかを把握しやすいでしょう。
逆に、
「この商品には○○という特徴があって、それ以外にも△△があります。また、○○には××という機能も搭載されていて、□□もできるので人気です」
などと、一つの文脈の中ですべてのポイントを説明しようとすると、聞き手は理解しにくく、結局は何がいいたいのか疑問が残ってしまいます。
要点をいくつかに整理して、簡潔な言葉で述べることが大切です。
6-3.相手の時間軸を把握し、共有する
口頭で説明するだけではなく、あらかじめ白紙のスケジュール表を用意しておき、お客様と一緒にスケジュールを書き込むのがいいでしょう。
「もしも、これを購入するとしたら、いつ頃がよろしいでしょうか」
「もしも、これを予算に計上するとしたら、どんなスケジュールになりますか?」
などと質問し、仮のゴールを設定します。
仮のゴールが決まったら、
「2か月後、具体的な提案をさせていただいてもよろしいですか」と自然な流れで商談を進めることができます。
6-4.中期的なシナリオを作る
3でゴールから逆算したシナリオをたてたら、「毎回の訪問で達成すべき目標」を考えましょう。
「とりあえず顔を見せるための訪問」にならないために、「この訪問では何を伝え、このような成果を手に入れる」とイメージした上でゴールを目指しましょう。
7.聞かれる前に自社製品の「弱点」を伝える
お客様から「この商品の弱点やデメリットは何ですか?」と質問された時、「ありません」と応える営業マンは相談相手としての資質が不足しています。
なぜなら、どんな商品にも必ず弱点があって、完璧な商品など存在しないからいです。ありませんと答える営業マンは「自社製品を客観的に見ていない」と判断され、「この営業マンの語ることは疑わしい」と思われても仕方がありません。
一方で、長所も短所も話せる営業マンは、「持っている情報も明確で、信頼に値する」と評価されるでしょう。
7-1.「弱点+リカバリー案」のセットで伝える
自社商品の弱点を伝えたら、その後必ず弱点をフォローする「リカバリー案」を提示しましょう。
たとえば、「稼働音がうるさい」のなら
「100円ショップで売っているクッションを下にひくだけで、音を小さくできます」
と提示すれば、仮にその商品を買っても稼働音を解消できる、ということがわかります。
7-2.購入リスクとその回避策もセットで伝える
お客様が「失敗しない決断」をするために必要な、客観的な情報を提示するのが営業マンの役割です。仮に現時点ではリスクがなくても、経済状況の変動などが原因で、将来的にリスクが発生することも考えられます。
営業マンは、考えられるリスクは、事前に包み隠さず提示する必要があります。
「こういうリスクがありますが、それに対してはこのような対策をとっています」
「事例としては、このような防御策をとっているお客様がいらっしゃって、効果をあげています」
など、リスクが発生しても代替案の用意があることを伝えておけば、それだけで購入の妨げにはなりません。
8. おすすめの本
『ウォール街の狼が明かす ヤバすぎる成功法則』|著・ ジョーダン・ベルフォート
レオナルド・ディカプリオが「人生を変える力を持ったお手本のような男だ」と絶賛したベルフォートの実例をはじめ、ドラッグに溺れていた10代の少年たちまで成功させたストレートライン・システムを日本初公開。
『売れないモノの9割は売れるモノに変えられる』|著・佐藤 昌弘
売れないモノと売れるモノの差は紙一重で、ちょっとの工夫で面白いように売れる。商品やサービスの魅力が伝わらないのは、その伝え方に問題があるだけ。マーケティングのカリスマが教える、「新しいマーケティングの教科書」。
『営業の魔法―この魔法を手にした者は必ず成功する』|著・中村 信仁
ダメ営業マンだった小笠原の、「成長」と「トップ営業マンへの道程」をリアルに描いた営業サクセスストーリー。
『トップセールスにはなぜ「いいお客さま」が集まってくるのか?』|著・横田雅俊
必ずだれでも結果が出せる「一生のお客様」をつくる方法とは。新人からベテランまで、明日から実践できるセールスメソッドが満載。
『世界トップ営業が明かす 営業マンはお客さまを選びなさい―当たり前だけど、やがて“大きな差”がつく34のルール』 |著・牧野 克彦
世界の保険営業のトップ1%「MDRT」を14回達成した著者が、ささいな工夫を自らの体験をもとに大公開。「毎日、頑張っているけれど、なかなか成果が出ない」と悩んでいる営業マンの必読バイブル。
9. まとめ
本記事で紹介したセールストークは、誰もが真似できますが、お客様を軽んじるための魔法ではありません。「お客様のために役に立ちたい」と思う営業マンが、それぞれの言葉が効果的であるロジックを理解し、相手と信頼関係を結ぶためのツールにすぎません。
当記事を読んでくださったあなたが、トーク術を身につけてトップセールスとなり、そしてあなたから買い物をしたお客様の笑顔に?がることを、心から願っています。
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