クロージングテクニック
クロージングテクニック
クロージングとは、営業マンがお客様に契約してもらうための方法です。
営業マンが断られるのを怖がって商談をあいまいにしてしまうと、お客様は決断を先延ばしにしてしまいます。
クロージングとは本来、いたってシンプルなもの。「買いますか? 買いませんか?」と選択肢を与えて、「今決めてください」とお客様の背中を押すことです。
しかし、営業マンが「真面目でいい人なのに売れない」「一生懸命やっているのに成績が上がらない」という場合、そのほとんどが「営業マンがクロージングをかけていない」状況です。
本記事では、営業職に就くすべての人へ向けて、「売れる営業マン」になるための具体的なノウハウとテクニックをご紹介してきます。
1.実践できる9つのクロージングテクニック
かつて「成約率98%」という嘘のような結果をたたき出し、世界142カ国中2位の成績を収めた女性営業のカリスマ、和田裕美氏をご存知でしょうか。
彼女が8年ぶりに営業をテーマに執筆した近著『成約率98%の秘訣』では、そのクロージング術を余すところなく披露しています。
まずは彼女の秘術を交えつつ、すぐに実践できるクロージングテクニックをご紹介します。
買いますか?買いませんか? としっかり聞く
今すぐ商品がほしいというお客様には必要ありませんが、「今日すぐに買わなくてもいい」というお客様は一定数いらっしゃいます。
その場合、「買いますか? 買いませんか?」と聞かれなければ、決断するきっかけがもてません。
営業マンが「買いますか? 買いませんか?」と聞けない理由は、拒絶が怖いからでしょう。
しかし、お客様は「商品を今買うこと」を断っただけで、あなた自身を拒絶したわけではありません。
「拒絶が怖い」という感情を乗り越え、自身を持って決断を促す質問をしましょう。
自分にもクロージングをかける
営業マンが自分で決めることができないのに、お客様に「決めてほしい」というのは、少し矛盾があります。
トレーニングとして、自分がほしいものがある時に、「ワクワクしたら自分にクロージングをかける」という練習をやってみましょう。
少し迷うような買い物でも、
「これを着てワクワクした気持ちで営業に出れば、成績が上がるかもしれない」
「こんな大きな買い物をしたら、きっとしばらくは無駄づかいをしないはず」
と、自分で自分の背中を押して決断力を高めます。
日本人の8割以上が「優柔不断」タイプといわれています。
そんな人の気持ちを理解できるのは、やはり同じタイプの人ですし、そしてそんな人の背中を押せるのはそれを克服してきた人だけです。
人が決められない心理を崩す
お客様が物を買う時に迷う理由。それは
もっと安いものがないかな?
もっと良いものがないかな?
この営業マンを本当に信じていいのかな?
という「決められない3つの不安」がついてまわるからでしょう。
人は「損をしたくなく、少しでも得をしたい」わけですから、たとえば@の場合は、
「お隣の○○カメラさんのお値段を言っていただけたら、それ以下に値引きします」
という提案が響きます。
さらに、比較するのは金額だけではありません。
不動産などで大きな買い物をすると、「もっといい物件がないかな?」という心理が働きます。
就職先や結婚相手なども同じでしょう。
Aの場合は、「家探しはタイミングとご縁です。
もっといいものが出てこないかなと探し続ける方がいますが、たいていの場合は探し疲れてしまいます。
この地域で、この値段で、というのは現在これしかありません」と伝え、相手の不安を消してあげましょう。
Bの営業マンに対する不安にはどうしたらいいのでしょうか。
基本的に営業マンは売りたくてあたりまえ。
ノルマがあれば焦るでしょうし、昇進がかかっていたらなおさらです。
しかし、基本的なことですが、自分のことばかり話さず、相手の話をよく聞き、相手をハッピーにする仕事である、ということを忘れずにいましょう。
本当にいい商品だと思っているからこの勧めるのです、と前段階で伝えておき、お客様を安心させてあげましょう。
お金の話をする
営業マンで「お金の話をするのが苦手で」という方がいます。
しかし、当たり前ですが、営業職とは、売上を上げる仕事です。
ボランティアではなく企業活動ですから、お金の話を堂々とするのは当然です。
だから、すべての営業マンは「お金はたくさんほしい」と素直に思ってください。
お金を稼ぐこと、お金を使うことに対する罪悪感を手放しましょう。
クロージングは必ず2回する
具体的なクロージング術として、まずクロージングは2回行ってください。
商品説明の前に1回、後に1回です。これによってお客様は決断をしやすくなります。
商品説明の前に一度クロージングすることで、お客様が「決断」について意識し、話を真剣に聞いてくれる確率があがります。
お客様が迷ったら、お金の話は出さない
商品やサービスの説明をしたら、あとは実際の契約内容やプラン、金額の払い方などをつめていくことになります。
ただ、ここでは焦ってお金の話をするのは避けましょう。
先ほどお金に対する観念を変えるようにお伝えしましたが、この段階では慎重に進める必要があります。
「ここまでは商品の話でした。ここからはお金の話をしますが、お金以外でわからない点はありますか?」
など、区別することが必要です。
この流れをつくると、お客様の思考がシンプルになり、必然的に決断は早くなります。
お客様の未来を一緒に描く
クロージングをする前には、「相場確認」と「ふくらまし」が必要。金額を伝える前に、まず相場観を知ってもらいます。
そして、その相場と比較しながら、いかに勧めている商品に付加価値があって、お得であるかということを伝えていきます。
たとえば、お子さんにピアノを購入されることを迷っている親御さんに対しては、
「お子さんが毎日ピアノを弾くようになり、音楽の感性が伸び、さらには音大に進み、作曲家になったり、ピアノの先生になったりする……」
という未来を共有します。
YES!SO THAT法
よく知られた応酬話法に「YES BUT法(イエスバット法)」があります。
最初はお客様を肯定し、その後「間違っていますよ」と攻めていく方法です。
しかし、「BUT」といわれてしまうと否定された気がして抵抗を感じる方もいるかもしれません。
だからこそ、「YES!SO THAT法(イエスソーザット法)」という方法がお勧めです。
「でも」という言葉を「だからこそ」に置き換えるだけで、お客様のプラスになるような提案に聞こえます。
最後はお客様の意思で決めてもらう
よくある営業マニュアルの本に、「お客様が買わない理由をどんどん消していこう」という方法が書かれています。
しかし、何かを決断する時、人はやはり迷うわけです。
だから、「買わない」という選択肢も最後まで残しておいてあげます。
不安があるお客様には、変に無理強いせず、不安をすべて聞いてあげましょう。
お客様の心が晴れて軽くなっていきます。
「悩んだ結果自分で選んだ」という感覚を持ってもらうことで、あとで何かにつまずいた時に、「営業に無理に買わされたから」と言われないようになります。
2.クロージングを有利に進めるための営業スキル
成約につながるクロージングをするために、普段から心がけておきたい営業スキルの基本をまとめました。
これをするかどうかで、あとのクロージングが変わってくるでしょう。
テストクロージングで肯定的な心理にさせる
本格的なクロージングに入る前に、テストクロージングを行うのは効果的です。
「仮に導入していただくとしたら、いつ頃が良いですか?」
「仮にご購入いただく場合、どのオプションをご希望されますか?」
など、契約後の具体的なイメージがわくような質問をしてみましょう。
あくまでも購入したケースを想定したという前提で話をし、希望される導入時期ならどの日程で納品可能なのか、オプションを付けた場合どのぐらいの値段になるのかを説明しつつ、具体的な購入に向けてさりげなくリードしていきます。
これは心理学でいうところの「一貫性の原理」を利用したものです。
自分自身の発言や態度を一貫したものとしたいという心理のことで、仮であっても肯定的な回答を繰り返した顧客は「断りたくない」という気持ちになっていきます。
ただし、価格で購入をためらっている場合はこの時点で値引きを提案しないようにしましょう。
値引きは最終兵器です。最後のひと押しで使うものと心がけて、クロージングの途中で値引きをしないようにしましょう。
急かさない
営業では購入や契約を得ようとするあまり、お客様を急かし、早く答えをもらおうとしてしまいがちです。
早く契約を得たいという気持ちは分かりますが、お客様は購入や契約を急かされていると感じると一歩引いてしまいます。
せっかく契約の意志があるお客様でも、強引に契約に持っていこうとする意志が垣間見えてしまうと心変わりしてしまう可能性があるので、焦りは禁物です。
内心は早く契約の返事がほしいと思っていてもお客様に感じさせないようにし、決断をそっと後押しするよう商談を進めていくのがクロージングのテクニックです。
決断するのはお客様ですので、契約を急かして不信感を与えるようなことのないようにしましょう。
クロージング後の沈黙を恐れない
商談中の沈黙は怖いものです。
とくに提案が終わった後は、営業する側も「断られるんじゃないか」と不安になり、場をつなぐためにあれこれとしゃべってしまいがちです。
しかし、提案後のお客様の沈黙は、お客様が結論を出すために考えている時間です。
そのタイミングで口を出すのはお客様の思考を中断させる上に、新しい情報が加わることで一層結論を出しにくくさせてしまいます。
提案が終わったら「いかがでしょうか?」と一言告げて、その後は顧客が口を開くまで自信たっぷりな様子で待ちましょう。
クロージングにおいて沈黙はお金です。
松竹梅のプランから選ばせる
価格をわけた3種類のプランを用意し、そこから選んでもらうのも効果的です。
人間には自分の行動は自分で決めたいという欲求があります。
選択肢を提示することで、「自ら選ぶ」という満足感を与えられます。
また「契約する・しない」の2択ではなく、契約を前提とした選択となるため完全な失注も避けやすくなります。
なお、松竹梅のプランを提示された場合は真ん中の価格を選ぶことが多いので、本命の提案は「竹」にするとよいでしょう。
自信たっぷりに振る舞う
クロージングでは強引に契約に持っていこうとするのは逆効果ですが、弱気になる必要はありません。
営業マンが自信なさそうにしていると、お客様は商品自体にも不信感を抱いてしまいます。
自信にあふれた態度に見せるためには、次のようなことに注意しましょう。
笑顔を保つ
背筋をしっかり伸ばす
相手の目を見る。目をそらさない
顎や髪の毛を触らない
動作を大きく、ゆっくりにする
ゆっくり、はっきりと話す
「〜なので、〜ですから…」というようにだらだら話さず、「〜です。だから〜」というように語尾をはっきり切る
3.売れる営業マンの心がまえとは
売れる営業マンであるためには、「人間力」があることは必須です。
営業という仕事について間もない新人さんはもちろん、営業職が長い人も、数ヶ月に一度は項目をチェックしなおし、自分自身を見つめなおすきっかけにしましょう。
思っている以上に、お客様はあなたのことを観察しています。
頭を真っ白にして、固定概念を捨てる
本当に売れる営業になりたいのであれば、一度頭を真っ白にして
「どんなことでも自分の体を使ってやってみる」
という精神で取り組むことです。
ネガティブな固定概念や思い込みがあると、どんなにいい方法や情報を受け取っても、行動に移せないからです。
トップセールスの自分をプロファイリングする
固定概念を捨てたら、なりたい自分をイメージして、その人がどんな容姿で、どう行動しているかを具体的に分析します。
これをプロファイリングと呼びます。
「ハキハキと話す」「姿勢がよく堂々としている」「声が大きい」
など、たくさんの答えがすぐに挙げられるのではないでしょうか。
「いらない」「忙しい」「興味ない」という拒絶のベールをはがす
すぐに返事をしたらガツガツしていると思われるから断ってみよう、という「かっこつけ拒絶」や「あとまわし拒絶」というケースもあります。
また「いらない」=「知らない」ということもあるでしょう。商品説明をする前にあきらめてしまうのは、逆に相手に機会を与えず、失礼なことです。
「嫌われる勇気」より「好かれたい気持ち」
まず、売れる営業マンになりたいのであれば、「こびている」と思われてもいい、と腹をくくることです。
営業は打って何ぼ、愛されて何ぼの世界です。好かれるにはどうしたらいいのか?
と積極的に考えて行動することが、必要です。
それでも「私は好かれたいと思わない」という人は、もしかしたら営業職ではない仕事が向いているのかもしれません。
笑顔キープと笑顔締め
挨拶のあとに笑顔を維持する。単純なことですが効果はてきめんです。
相手もしだいに軟化し、空気が必ず明るくなります。とにかく笑顔は5秒キープ、を心がけてみてください。
最初に忘れてしまっても、最後に「にこっ」と笑顔で締めれば、印象はぐっとよくなります。
禁句禁止
「厳しいですね」。
これは売れない営業マンがよく言う口癖です。
一度難しいといってしまうと、その意見を立証するために思考が自動的に変わってしまいます。
「時代がこうだから仕方ない」「予算がないから仕方ない」など、たくさんの理由が挙がってしまいます。
確かに、世の中には難しいことがたくさんあります。しかし、営業ならばわずかな「可能性」を見出さなくてはいけません。
お客様と自分の関係に可能性を探すことでもあります。
決断するためにはカウントダウン10秒
どうしようか迷ったら「10、9、8、7……」とカウントダウンするくせをつけましょう。
そんなことを繰り返しているとどんどん決断が早くなります。
悩む時間が少なければ、行動力がついて、挑戦が増え、自信がつき、人生が変わっていきます。
あきらめの悪いやつ、と思わせる
見込み客を見つけるのは容易ではありません。
行動力がものをいいます。今日の1日の最後はとことんあきらめの悪いやつになりましょう。
「もう終わろうかな」と思った時に、あと1件、あと1人、と思って行動してみてください。
言葉の穴を3回掘る
自分が何気なく使っている言葉も、深堀りするクセをつけましょう。
お客様がいう「快適な家」とはどのような状態か。
「温度調節」なのか、「天井の高さ」なのか。それとも「キッチンが広いことなのか」。
言葉を3回以上は深堀りしましょう。
あなたが好きだから知りたい、と思う
売れる営業マンは、決まって相手に興味を持っています。
そして基本は相手のことを名前で「○○さん」と連呼してください。
ほかの人には目をくれず相手だけを見つめて、悲しい話でない限り、口角は上げて微笑んでください。
そして、相手が話しやすい話題を振りましょう。
売れる営業が肝に銘じる3つの思考
売れる営業マンの基本は、「陽転思考」「単純思考」「感情移入」の3つです。
この3つの思考癖のどれが欠如していても駄目です。
「陽転思考」は、何かミスをしたとしても、ひとつでも「良かったこと」を見つけること。
「単純思考」でなく、複雑に考えて変に勘ぐったり、素直に人の意見を聞けない人は営業成績が上がりません。
また、「感情移入」をして、無邪気でいられること。
これらがないと、人をワクワクさせることはできません。
嘘をつかない
もし自分の営業している商品が嫌いなのにお客様に売るとしたら、それは嘘つきになります。
嘘をついて営業していると、いつか心が壊れます。
どうせ営業をするなら、自分が使いたい商品サービスを売りましょう。必ず数倍は売れるようになります。
ごはん1膳分のカロリーでお客様の話を聞く
クロージングを成功させるうえで、営業が聞き上手であるのは当然のことです。
人は親身になってくれた人に好感を持つし、好きな人から商品を買いたいものです。
自分の話を興味津々に聞いてもらえれば、お客様の自尊心を保つことができます。
「相手におへそを向け」「全身であいづちを打ち」「うなづき」「目を見ている」。
このあたりに注意して、全身全霊でお客様の話を聞きましょう。
あいづちは大げさに
「聞き上手」になるために一番大切なことは、「私はあなたに興味を持っている」という姿勢を全力で相手に伝えること。
あいづちのタイミング、表情、間の取り方は、ぜひ周囲にいる売れる営業マンの真似をしましょう。
お客様の未来を見る
営業マニュアルに書いてある質問トーク集だけでは、お客様の心は動きません。
あくまでお客様が本当にほしいと思う「未来」にゴールを置き、質問しましょう。
直球ではなく、ゆるいカーブで質問
「英語を話したいですか?」
と聞いてしまうと直球すぎます。
それよりは「英語は話せないより話せたほうがいいですよね〜」といいましょう。
商品を売りつけるのではなく、繰り返しになりますが、お客様の未来の夢を叶えることがゴールです。
話すのはお客様がほしい情報だけ
「話が上手なのに、なぜが売れない」。
そんな人は、おそらく「話しすぎ」の可能性があります。自分に酔って話していても、お客様にはメリットがありません。
お客様に不要な情報は極力削りましょう。
専門用語は使わない
営業の基本は、話がわかりやすいこと。
これも前項と近いのですが、知識をひけらかしたり、情報通の立ち振る舞いをしないようにしましょう。
最高級の提案でイニシアチブをとる
商談の場で効果を発揮するのが、最高級の提案です。
「英語を勉強するなら留学が一番いいのですが、お仕事もされていますし現実的には難しいですよね。日本にいても英語に触れる頻度を高めたほうがいいと思うのですが、週何回くらいであれば通えそうでしょうか?」
といった具合です。
最高級の話から「自分にできる可能性」を考えてもらえば、一歩前に進んだ答えがもらえるでしょう。
4.おすすめの本
成約率98%の秘訣|著作・和田裕美
営業コンサルタントとして数々のベストセラーを送り出した著者の最新著書。
保険、不動産、化粧品、スポーツジム、歯科、計5つの業種でよく遭遇する場面を再現しています。
「3つの言葉」だけで売上が伸びる質問型営業|著作・青木毅
成績を上げるには、3つの質問を使って、聞く順番を正すだけ。新人でも3ヶ月でトップになれる秘訣が書かれた本。
営業の魔法―この魔法を手にした者は必ず成功する|著作・中村信仁
発売以来、いまだに読者から高い支持を得ている「仕事の物語」。
「この職業を通して誰を幸せにしたいのか?」を考えるきっかになる1冊。
かばんはハンカチの上に置きなさい―トップ営業がやっている小さなルール|著作・川田 修
プルデンシャル生命・営業の最高峰であるエグゼクティブ・ライフプランナーとなり、全国約2000人中1位のトップセールスとして表彰を受けた伝説の営業マンであった著者の初の著書。
5.まとめ
時間をかけて営業やプレゼンをしてきたのに、最後のクロージングで断られてしまってはそれまでの苦労が水の泡です。
ここで紹介したクロージングテクニックを身につけて、しっかり成約につなげられる営業マンを目指しましょう。
あなたから商品やサービスを買ったお客様の「ハッピー」を描きながら。
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